日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

腰越状の虚構性について


さて、先日腰越状について疑義を呈し、義経は鎌倉に入って頼朝と対面していたのではないかと推測したわけですが、この問題に関して私の推測を補強してくれる記事がブログ『平家物語』さんにありましたので、早速紹介させていただきます。


まず、義経の下向部分について『平家物語』諸本の比較をなさっており、こうして並べていだだくと非常に分かりやすいですね。この比較によって、もともと鎌倉入りして頼朝と対面していたものが、鎌倉入りも対面も出来なくなっていく変化が見てとれます。腰越状は対面できなくなった結果、生み出された虚構と見るべきでしょう。


さらに『吾妻鏡』の記事の齟齬を指摘されています。逗留地を酒匂宿としながら、なぜか腰越駅より腰越状を送っていること、これが『吾妻鏡』の編纂時に義経伝説から取り入れられたものではないか、という指摘は非常に的を射ているように思います。


というわけで、これだけ素材があれば腰越状が虚構であると自信を持って叫べますよ。
ただし、大事なことは腰越状そのもの云々ではなく、「腰越状的理解」から脱却して、頼朝と義経の関係を改めて捉え直すこと、あくまでこれが肝心な問題ですので、ここからが重要ですね。