日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

後白河上皇/安田元久/人物叢書

後白河上皇 (人物叢書)

後白河上皇 (人物叢書)

  • id:sanraku2:20050128:b1
  • 十、寺院勢力との葛藤
  • 十一、反平氏勢力の黒幕
  • 十二、激浪への挑戦 −院政再開−
  • 十三、「治天の君」の権謀術数
  • 十四、日本国第一の大天狗
  • 十五、専制君主の光芒


全体としての後白河院の評価を、

専制君主として縦横に権謀術数をめぐらし、その強力な政治権力を保持し得た

としているのだが、本書を読んでもそのような感じられなかった。
例えば一ノ谷の戦いにおける後白河院の動向に関する件。合戦直前に和平工作の動きがあったことを

こうして、法皇は結果的には、平氏側をだまし討ちにしたことになった。そこから、これらの和平工作や、和平姿勢が、法皇による故意の策謀であったとの説も生まれる。しかし、その解釈は当たっていない。
(中略)
そこには朝議の不定見と、法皇自身の混迷があったことによる、偶然の結果と解すべきであろう。

このように解釈しているし、義経の無断任官に関する件でも

ところで、この義経の任官を、法皇が頼朝と義経とを離反させ、義経を引級して、これを頼朝の対抗馬に仕立てようとする老獪な策謀であったとする見方もある。
(中略)
しかし、この任官の時点で、すでに法皇がそうした術策を構想していたものとするのは、かなりうがち過ぎた考え方であろう。法皇としては戦術を賞賛されている義経を、都の治安責任者として高く評価していたに過ぎないと思う。

このように述べている。
どちらも妥当で頷ける解釈だと思うのだが、これら個々の評価から策謀家とする全体としての評価に繋がるとは思えないし無理がある。この点が本書の残念なところ。