戊辰戦争/保谷徹/吉川弘文館
- 作者: 保谷徹
- 出版社/メーカー: 吉川弘文館
- 発売日: 2007/11/16
- メディア: 単行本
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「戦争の日本史」シリーズの第18巻。
戦史をなぞるだけでなく、軍制や武装・兵装、兵站や出納や徴発、列強諸国との外交関係から戦場での残虐行為に至るまで、幅広い分野について言及しているので勉強になります。参考文献もその都度挙げているので入門書として最適でしょう。
さて、来年の大河ドラマで関連でいうと、江戸城無血開城の一件についての記述が気になるところですが、
静寛院宮らの嘆願状も取り上げられることはなかった。新政府は東征中止の建言をことごとく無視し、着々と討伐軍を江戸へ向けて進軍させていった。
と、天璋院(篤姫)や静寛院宮(和宮)が果たした役割については全く触れてもらえず。
そして江戸城総攻撃中止の要因として、イギリス公使パークスが総攻撃計画を激しく非難したことを挙げています。
ただし、西郷隆盛には既に総攻撃の意思はなく、これは反対派を抑えるための材料として利用された可能性がある模様。
そもそもパークスの反対が3月13日*1で、3月14日に勝海舟と西郷隆盛の会見によって総攻撃中止。そして3月15日が総攻撃予定日だった、というのはドラマチックに過ぎる。急転直下そうなった、というより事前に根回しがあって、そういう道筋が付けられていたと考えるのが自然でしょう。3月9日に西郷隆盛が山岡鉄舟に対して寛典の七ヵ条を示していることからもそれが窺えます。
となると、取り上げてもらえなかったとはいえ静寛院宮らの嘆願の影響力は少なくなかったのではないか。そう思うわけです。