日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

偽りの大化改新/中村修也/講談社現代新書

偽りの大化改新 (講談社現代新書)

偽りの大化改新 (講談社現代新書)

  • 序章、天智との出会い
  • 第1章、大化改新前夜
  • 第2章、作られた「大化改新
  • 第3章、陰謀家・孝徳の素顔
  • 第4章、虚構の中大兄王子


本書の主張は、乙巳の変において中大兄皇子中臣鎌足が中心的役割を果たしたとする『日本書紀』による通説見解に対して、その矛盾点や不自然な点を指摘し、これが創作されたものであるという点。そしてその後の政治動向における中大兄皇子への(微妙な)負のイメージも創作されたものであるとし、それらは『日本書紀』を編纂した天武系王朝によるものだとする、上記2点にあります。
細かい部分はさておき、大筋の部分で賛同できる見解です。


日本書紀』は編纂史料であり、かつ他に比較検討できる史料もほとんどないので、どこまで信頼を置いて良いのか、どこの記事が信用できてどこの記事が信用できないのか、判断が難しいところなのですが、本書では『日本書紀』のストーリーに沿って考え、その中でどこに矛盾点・不自然な点があるのかを挙げ、そこから歴史を再構築していくという手法を採っていて、なかなか参考になりますし、説得力もあります。
また、いままで何気なく捉えてきた基本的な事柄にも、矛盾点・不自然な点が多く潜んでいることを改めて教えられました。
ただ、後半は推測に推測を重ねることが見受けられ、内容に不安定さが目につくのが残念なところ。新書ですから、冒険的な内容で耳目を引こうとするのもある程度は仕方のないことかもしれませんが。