明治天皇/笠原英彦/中公新書
- 作者: 笠原英彦
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/06
- メディア: 新書
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- 第1章、幕末の政局と睦仁の降誕
- 第2章、激動の中の即位と明治維新
- 第3章、天皇権威確立の努力と挫折
- 第4章、維新の宰相、大久保の政治指導
- 第5章、伊藤首班の集団指導体制
- 第6章、立憲制の確立と皇室制度の形成
- 第7章、憲法の制定と立憲政治の開始
- 第8章、議会政治の進展と日露戦争
- 第9章、天皇の晩年と明治の終焉
明治時代政治史における立憲君主としての明治天皇が本書のテーマです。
天皇と政府の関係は微妙であり、立憲君主としての天皇の立場は複雑であった。明治天皇は伊藤に多大の信頼を寄せていたが、伊藤は韓国併合への道のりにおいて、天皇に的確な情報を提供せず、事実上政治判断を仰がなかった。
それでも天皇と政府の関係が維持できたのは、ひとえに明治天皇が忍耐強かったからである。天皇は心して政府に歩調を合わせた。それこそが明治憲法に謳われた「統治権の総攬者」の実態であった。
天皇親政運動による宮中・府中の対立を経て、行き着いた立憲君主制。しかしそれは制度による安定したものではなく、天皇や政府関係者らの個人的力量や性格に依存した、微妙なバランス下にあったようです。
明治天皇は積極的に政務に取り組んでいますが、人事への容喙や政府への批判、後押しといったレベルに留まっています。そういえば昭和天皇も、いくつかの例外はあるものの概ねこの路線を踏襲しているのではないでしょうか。この微妙さゆえに天皇と政府の関係は理解されにくいのでしょう。
ちなみに、明治天皇は政務への熱心さの反面、祭祀は疎かにしがちだったそうです。ちょっと意外です。