日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

御土居堀ものがたり/中村武生/京都新聞出版センター

御土居堀ものがたり

御土居堀ものがたり


御土居」は、豊臣秀吉が京都に築いた長大な土塁として知られています。その「御土居」の歴史と現状について取り扱った一冊。


御土居」については教科書レベルの知識しか持ち合わせておらず、それゆえ本書の内容は新鮮で刺激的。そしてなにより「御土居」だけでもこれだけ充実のボリュームとなったことに驚きました。
まず本書では書名にもあるように「御土居堀」と称しているのですが、それは土塁だけでなく堀がセットとなっているからだそうです。そして「御土居」では土塁のみがイメージされ、堀が意識されないため、「御土居堀」という名称を提唱されています。確かに私も堀があることを意識しておりませんでした。
それから、御土居堀は現在そのほとんどを失っており、遺構は数少なくなっているためか、早くに消滅したようなイメージを抱いていたのですが、それは誤りで、江戸時代においても大半が残存していたという。かなり意外な感じです。


そして本書で最も衝撃を受けたのは文化財保存に関する問題。
御土居堀は明治以降の開発によって大半が破壊され、その後、国指定史跡に指定されて保存が図られたそうですが、指定地にも関わらず破壊を受けた場所もあるという。まして指定地外をや。


それでもまだ幾つか遺構は残っていて、私はまだ一ヶ所、それもあんまり見栄えのしない部分しか見ていないのですが、土塁と堀であることを実感できる部分もあるそうなので、それらが破壊されないうちに見学しておきたいと思います。
ちなみに本書の第2部は御土居堀見学の案内書となっていて、地図と解説も詳しくて二重丸です。


御土居(北区大宮土居町)