源義経の合戦と戦略/菱沼一憲/角川選書
- 作者: 菱沼一憲
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/04/25
- メディア: 単行本
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- 第3章、在京期
- 第4章、西海の戦陣
『吾妻鏡』を軸とした通説的義経理解への挑戦。
合戦における義経は、行動力・決断力・意外性といったものが従来評価されてきたが、本書では周到な準備に着目して評価している。また、頼朝代官としての畿内における行政面での活動も評価し、「政治センスの欠如」という評価を否定している。ただこれについては、政治センスというよりあくまで行政官としての手腕であり、政争・権力争いという所謂「政治」におけるセンスとはまた異なるものではないだろうか。
さらに自由任官や腰越状などへの疑義を呈し、義経と頼朝の対立過程を再構築。ここの部分に関しては、先週言及した*1著者の論文が関係してくるところ。腰越状を歴史史料として否定が個人的にはキーポイントとなった。
そうか、そうであれば対面拒否に京都追却といった懲罰的処置と考える必要はなく、再び京都代官として上洛したと理解することができる。その上、その後の平宗盛の処刑遂行や伊予守任官が矛盾なく受け入れられる。
残る問題の所領*2没収も、勲功の否定と捉えればよく、その勲功の否定が義経の挙兵へと至る端緒ものと説いているのも納得がいく。
と、このように刺激に溢れた本書ですが、盛りだくさんなので一度読んだくらいではやっぱり消化しきれず。ま、大河ドラマを見るときの参考文献としてちょくちょく見ていくつもりなんで、それである程度は何とかなるかな。
*1:源義経の挙兵と土佐房襲撃事件/菱沼一憲/日本歴史(684号) - 日本史日誌
*2:勲功により与えられた平家没官領。