日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

上杉謙信/矢田俊文/ミネルヴァ書房

上杉謙信―政虎一世中忘失すべからず候 (ミネルヴァ日本評伝選)

上杉謙信―政虎一世中忘失すべからず候 (ミネルヴァ日本評伝選)


ミネルヴァ日本評伝選の一冊。
まだ半分ほど読んだだけですが、内容は人物評伝というより戦国期越後の歴史とか権力構造の研究といったところ。第3章までは謙信以前がテーマですしね。まあ、これはこれで面白いです。


長尾為景といえば、越後守護代として越後守護上杉房能と対立の末に戦死させ、仇討ち戦に乗り込んできた関東管領上杉顕定をも返り討ちにし、さらには擁立した守護上杉定実とも対立してこれを封じこめたという、下克上体現者の典型的存在。
しかし、そんな彼も守護権力の呪縛からは逃れられなかったというのが興味深い。所領安堵の判物では守護同様の保証をすることが出来ず、政治体制もあくまでそれまでの組織に依存しているという。しかもそのような状況は次代の晴景、さらには景虎の初期にまで続いていた模様。それが変化するのは、上洛して相伴衆に取り立てられた永禄二年(1559)らしい。翌年には関東に攻め入って関東管領に就任するので、その影響もあるように思う。