保元・平治の乱を読みなおす/元木泰雄/日本放送出版協会
- 作者: 元木泰雄
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2004/12
- メディア: 単行本
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- 第三章 激闘の果て−保元の乱の結果
- 第四章 新たな闘い−平治の乱の前提
- (つづき)
ようやく平治の乱への入口に差し掛かる。
院を頂点とする王家と摂関家、この二大権門が並立してきたのが院政期の基本的な構造であった。しかし、両者は分裂、解体され、その政治力は低落した。従来、治天の君に従属してきた院近臣たちが自立して独自の活動を開始したのが、保元の乱後における政務の特色である。
保元の乱で天皇家・摂関家ともに分裂し、乱後は後白河天皇・関白藤原忠通に収束されたものと思っていたが、そうではなく、両者とも政治的力量に欠け、また後白河はその即位が中継ぎに過ぎなかったために立場は弱く、また荘園が美福門院や八条院に分割されたため経済基盤も盤石とは言い難い。忠通も摂関家領や氏長者を取り戻したが、天皇からもたらされたため独自性を失い、政治的地位を低下させたとする。
この両者の権威の低下が動乱を、平治の乱を招いたという見解だ。と、いうところで今日はここまで。
面白いのは藤原信頼に関する考察。大河ドラマでは完全スルー、『平治物語』ではボロクソと散々の彼だが、ちょっと待って!という内容。帯にも「信頼は無能なのか?」とあるように本書のウリのひとつ。
また本書の特徴としては、いままで両乱に特化した唯一(だと思う)の概説書である河内祥輔氏の『保元の乱・平治の乱』批判が随所に見られること。大いに結構なことである。これを機に両乱に関する議論が活発になること、書籍・論文が多数出ること、を願わずにはいられません。