平城天皇/春名宏昭/人物叢書
- 作者: 春名宏昭
- 出版社/メーカー: 吉川弘文館
- 発売日: 2008/12
- メディア: 単行本
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『日本後紀』などで不当に貶められた平城天皇復権の書。
といっても、気まぐれ屋のイメージまでは変わらず(笑) 突発的譲位とか*1、平城京還都未遂とか。
皇位継承構想
平城天皇とその前後の皇位継承について考察しています。これがなかなか興味深いです。
特に平城天皇が嵯峨天皇を皇太弟に指名したのは、桓武天皇の遺志ではなく、平城天皇自身の意志であると。桓武朝においては伊予親王が有力候補であったことを考えればそれも納得。
ただ、それは光仁天皇が意図した兄弟継承に倣ったのではないか、というのはどうだろう? 光仁天皇の場合は【桓武→早良親王】で、どちらにしても自身の血統になる。平城天皇の場合は、同母弟であることを重視すべきではないか。母との絆も深そうなことですし。
薬子の変
藤原薬子と兄仲成が平城上皇の重祚を画策するも失敗に帰した、とされる事件。最近では「平城太上天皇の変」などと呼ばれるそうです。
本書では、嵯峨天皇側のクーデターであることを力説しています。言われてみれば確かにその通りであると思う。平城上皇側は不意を突かれ、為すすべもなくあっけなく終幕を迎えている。そのことだけで充分でしょう。
また、嵯峨天皇は病床にあり、貴族層にも首謀者となりうる人物が見当たらないことから、クーデターは公卿らの総意とみています。仲成薬子兄妹をスケープゴートにして、専権を振るう平城上皇を排除するのが狙い。平城京還都を宣言した途端のことですから、もう上皇に振り回されるのはゴメンだ!ということでしょう。平城上皇はそのような反応はまったく想定していなかったでしょうから、何とも哀れなことです。
*1:病気を理由にしているけど、それも何だか胡散臭い。改革の挫折に倦んだのかも?