日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

殴り合う貴族たち/繁田信一/柏書房

殴り合う貴族たち―平安朝裏源氏物語

殴り合う貴族たち―平安朝裏源氏物語

平安時代中期の貴族たちによる暴力事件のエピソード集。藤原実資の日記『小右記』を主な資料としています。


暴行傷害拉致監禁、一般的な貴族のイメージを覆してくれる事件の数々に驚き入るのみです。ほとんどが伝聞記事なので、デマや誇張が混じってる可能性もありますが、それでもこれだけの数に及ぶとこれらの事件が例外的なものではなく、

「王朝貴族」と呼ばれる人々は、かなりの程度に暴力に親しんでいました。

とする本書の主張のとおりであったと思われます。


本書は事件を紹介するに留まっていますが、これらの時代背景とか要因とかそういったところも気になりますね。中世社会の特色である自力救済の萌芽と捉えるべきか、或いは自力救済は古代より続く伝統なのか、はたまた中世の自力救済とは異質なものであるのか。


それと、暴力の直接行使者は貴族本人より従者である場合がほとんどのようですので、これら従者についても気になりますね。社会的身分はどのようなものであったのか、雇用関係はどうなっていたのか、とか。
本書を読む限りでは、その多くが破落戸(ごろつき)のようなので、江戸時代の武家奉公人をイメージしているのですがどんなもんかな。