日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

浅井氏の読み仮名をめぐって〜和名類聚抄・節用集を調べる(前)

歴史マニアの間では「あさい」ではなく「あざい」と読むのが半ば常識と化していますから、旧来の読みがやっぱり正しいという主張はセンセーショナルですらあります。
さてその根拠ですが、ひとつは平安時代成立の『和名類聚抄』に「あさい」と訓じてあること。そして近世に流布した『節用集』(易林本)では「あざい」とあるが、これより古い『節用集』(黒本本)には記載がないことから、近世になって濁ったようだ、としています。
もう一押し欲しいところですけど、「あざい」説の根拠は現在の東浅井郡西浅井町などが「あざい」と訓じることに拠るようで、それが近世より遡れるのかどうか分かりませんから、現状では「あさい」説の方が有力と言っていいのではないでしょうか。

浅井氏三代/宮島敬一/人物叢書 - 日本史日誌


以前、宮島敬一『浅井氏三代 (人物叢書)』を読み、以上のように「あさい」説を有力とみたのですが、

中世以前に、仮名に濁点を振ることはありませんでしたからねぇ。当たり前だと思います。
ですから、中世以前の仮名の史料に濁点がない、というのは、実はまったく根拠として成り立たないと思います。


との指摘を受け、私の見込みは敢えなく振り出しに!('_`)ウゥ どうやら穢れ思想の影響で濁音・濁点は避けられていたようです。
見通しも立たず途方に暮れていたところ、耳寄りな情報が!

日常表記で濁音を表す方法がなくても、『和名類聚抄』のような辞書では濁音を識別する必要性は理解されており、傍点などで表示されていました。それを踏まえて著者は「あさい」であった、と述べているのではないでしょうか。


もしそうであれば、清音・濁音の区別が付けられるので願ったり叶ったり。これは何としても『和名類聚抄』に当たってみなければなりません。というわけで図書館で調べることにしました。


(つづく)