日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

秀吉神話をくつがえす/藤田達生/講談社現代新書

秀吉神話をくつがえす (講談社現代新書)

秀吉神話をくつがえす (講談社現代新書)

ん?なんかくつがえったかいな?(^◇^;
まるで『その時歴史が動いた』のようですが・・・まあ新書らしいタイトルではある。


さて内容はというと、中盤は本能寺の変、終盤は惣無事令。惣無事令論批判は興味深かったものの、本能寺の変については相変わらずの印象。足利義昭黒幕説から足利義昭推戴説にシフトチェンジしていますが、新たに有力な根拠が見出されたわけではないですから、単独説有力の現状に変化はないでしょう。
政権論を用いているあたりはさすが研究者と感じましたが、その解釈については疑問が残ります。すなわち、足利義昭は室町将軍の権威を持続して信長包囲網の中心にあり、それまで信長政権の離反者*1はその一端に加わっていることから、著者は本能寺の変もその延長線上に位置付けているのですが、むしろ本能寺の変は室町将軍の権威喪失の画期となったと捉えるべきではないか。本能寺の変後に室町将軍の権威が見る影もなくなったことは言うまでもありませんし*2。少なくとも足利義昭推戴説の根拠とはなり得ないでしょう。

*1:荒木村重松永久秀

*2:本書では、秀吉が足利義昭の養子になろうとして失敗したエピソードを紹介していますが、その史料は江戸時代の徳川御用史観のもので信憑性に欠ける。