日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

北条早雲とその一族/黒田基樹/新人物往来社

北条早雲とその一族

北条早雲とその一族

同氏著の『戦国 北条一族』と内容が被ってんじゃないかと心配しましたが杞憂でした。あちらは歴代当主メインで、こちらはその他の一族がメイン。上杉景虎北条氏秀が別人である件もこちらに収録されておりました。*1
庶子・庶流家だけでなく妻女や婚族なども網羅。充実した内容になっているので、これは"買い"ですよ!


さて、色々と気になるネタが目白押しですが、何と言っても一番の注目は北条綱成の出自についてですよね。
戦国の魁早雲と北条一族』でも示された見解ではありますが、大永五年(1525)に武蔵白子原合戦で戦死を遂げた伊勢九郎(櫛間九郎)の子であった可能性が高い、とされています。伊勢名字を称していることから、彼が北条一門として遇されていたとみられ、さらに姻戚関係も想定されるとのこと。そのような人物の子息であれば、北条氏綱の婿養子となり、北条為昌の名跡を継承する、といった待遇も頷けます。
武田信虎と戦って敗死した福島正成の子、というのが一般的な説ではありますが、同人の存在が立証できず俗説と化している現状においては、最も有力な説でしょう。
ただ、その拠って立つ根拠は、「綱成が福島(くしま)氏の出身」であることに求められているのですが*2、そこを疑う必要はないのでしょうか? 著者は「間違いない」と述べておられますけど、一抹の不安が漂います。


ちなみに、綱成は天文二年(1533)より史料にみえるとのことですから、天文五年の花倉の乱で駿河より逃れた福島越前守の一族を出自と想定することは出来ませんね。

*1:あちらではスルーされていたので不思議に思っていました(;^_^A→戦国北条一族/黒田基樹/新人物往来社 - 日本史日誌

*2:福島→くしま→櫛間で繋がる。