武田信玄と勝頼/鴨川達夫/岩波新書
- 作者: 鴨川達夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/03/20
- メディア: 新書
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- 第1章、信玄・勝頼の文書とは
- 第2章、文書はこう読め
- 第3章、文書はこう作られる
- 第4章、信玄とはこんな男
- 第5章、信玄・勝頼の歩いた道
前半の三章は、武田信玄・武田勝頼父子に関連した古文書を題材とした古文書学入門。そして後半は、古文書からみた信玄の人間像と政治的動向について。
古文書学パートは、面白味という点ではいまひとつですが、古文書の重要性を改めて感じさせていただきました。ただ取り扱いの難しさも伴っているので、文書アレルギーは治癒しませなんだ。
さて後半部ですが、これがとても興味深い。
ひとつは、駿河攻めそして織田信長との敵対について、信玄による主体的な行動とする大方の見解に対して疑義を呈しています。信長もそうですけど、英雄的な人物の行動というものは、どうも何でもかんでも積極的で主体的なものとして解釈される傾向にありますが、彼らとて社会の一部ですから受動的な行動だってあるわけですし、過剰な評価は見直すべきところもあるでしょうね。
そしてもうひとつ。武田勝頼が織田信長と和睦を図っていたことはこの間知ったばかり*1ですが、実は武田家のみならず上杉景勝も信長との和睦を模索しており、しかも双方がそのことを知っていて、状況を知らせ合いながらも、お互いに抜け駆けされて孤立することを恐れて疑心暗鬼になっている、という涙なしには語れぬ状況が古文書から知れるそうです。
また、信長がそれに対して聞く耳を全く持たなかった理由は、信玄が突如友好関係を破ったことへの深い恨みにあったと推測していますが、首肯できる見解でしょう。もちろん周囲に強敵が居なくなったという状況がそれを可能としたわけではありますけど。