壬申の乱/倉本一宏/吉川弘文館
- 作者: 倉本一宏
- 出版社/メーカー: 吉川弘文館
- 発売日: 2007/01/16
- メディア: 単行本
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「戦争の日本史」シリーズの第2巻。
乱に至る契機や経緯、乱の過程など、通説に対して疑問を投げかけながら、新たな「壬申の乱」像をつむぎ出していて、興味深い一冊です。
ただ、天智天皇・天武天皇の兄弟関係の問題に触れていない点と、大海人皇子の吉野隠退の原因・理由がいまひとつ説得力に欠ける点に不満が残る。大海人の即位が既定路線だとするならば(中継ぎという条件が足枷になっているにしろ)、それを辞しての都落ちが積極的な要因によるものだったとは考えがたく、わざわざ挙兵というリスクを伴う賭けに出たということは、何らかの負の要素があったと考えるのが自然だろう。本書ではそれを天武の後継者問題に求めているのだが*1、果たしてそれが挙兵のリスクに見合ったものといえるだろうか?
また、挙兵するための隠退であったなら、何故その行き先が挙兵の地盤となった東国(美濃・尾張)ではなく吉野になったのか、という点についても検討しなければならないだろう。
まあ著者も記されているように、壬申の乱については、まだまだ検討の余地がありそうだ。