日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

信長の天下布武への道/谷口克広/吉川弘文館

信長の天下布武への道 (戦争の日本史)

信長の天下布武への道 (戦争の日本史)

著者の谷口氏は信長関連の著作がいくつかあり、内容の重複がみられるので新鮮味はあまりないものの、編年形式のためか歴史の流れが掴みやすく、かつ読みやすい。


一点、興味を惹いたのは稲葉山城攻略の時期に関する見解。
信長公記』が永禄十年(1567)8月とするのに対して、『富士見道記』には信長が8月中旬に伊勢長島に出兵したことがみえ、かつ稲葉山周辺への禁制・安堵状などの発給が9〜10月に集中する、というギャップがある。このため『信長公記』の記す日付は誤りなのではないか、とされ、稲葉山城攻略を9月とする見解が主流となっている。
本書ではこれに対し、『信長公記』では年の誤りはあっても、月日の誤りは他にみられないことから、8月の稲葉山城攻略が誤りとは考えにくいことを指摘。そのうえで、伊勢長島出兵は稲葉山城から伊勢長島に逃げ込んだ斎藤龍興を追撃したものと推論し、禁制発給のずれ込みも伊勢長島からの引き上げ後になったためではないか、という。
当を得ているんじゃなかろうか。