日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

武田信虎のすべて/柴辻俊六 編/新人物往来社

武田信虎のすべて

武田信虎のすべて

鉄は熱いうちに打て。ということで、信虎への興味が冷めぬうちに読みました。
信虎に関する史料は少ないそうで、確かに記事の内容で重複している箇所もあったりしますけど、なかなか充実していると思います。特に、あまり馴染みの無い信玄誕生以前の事績について取り上げているのが嬉しい。


さて、私が一番注目していたのは、信虎・晴信の父子相克についてどのように捉えられているのか、そのあたりのところだったのですが、残念ながらこの件に正面から取り組んだ記事は無し。これまで読んできた武田氏関連書籍も含め、信虎暴虐史観は否定される向きにあるものの、こちらは何の批判もなしに踏襲される傾向にある。父子相克についての典拠は『甲陽軍鑑』のみで、そしてその『甲陽軍鑑』は誇張・潤色されている。となれば結論は言わずもがな。ましてや信虎追放事件とて父子相克に頼らずとも説明可能であり、これに拘る必要はどこにもない。にもかかわらずのこの状況はどうにも解せない。タブーだったりするんだろうか?