日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

主君「押込」の構造/笠谷和比古/講談社学術文庫

主君「押込」の構造―近世大名と家臣団 (講談社学術文庫)

主君「押込」の構造―近世大名と家臣団 (講談社学術文庫)

  • 第1章、阿波蜂須賀家の君臣抗争
  • 第2章、諸大名家の「押込」事件
  • 第3章、「押込」慣行の構造
  • 第4章、近世の国制


前半は主君押込の事例を挙げて検証し、後半はそれをもとに近世武家社会の構造やその思想といった大きなテーマについて考察しています。読み応えあります。
主君押込とは、家臣団が主君を文字通り座敷牢などに押し込めて監禁する行為。興味深かったのは、時代による変化についての指摘。江戸時代を通してその形態は一貫したものと思いこみ、変化など考えもしていなかったので新鮮でした。江戸時代初期において君臣抗争が起こった場合、幕府は幕藩体制という君臣秩序の確立を図っており、あくまで君主権力を支持していたが、それが万治三年(1660)の伊達綱宗隠居事件*1を画期として、以後は家臣団総意による押込を是認する方向に変わったとのこと。
当時は四代将軍徳川家綱期で、前代までの武断政治から文治政治への転換が行われたとされる時期に当たる。これもまたその政策の一環なのだろうか。

*1:有名な伊達騒動の発端となった。