日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

中世武士の城/齋藤慎一/吉川弘文館

中世武士の城 (歴史文化ライブラリー)

中世武士の城 (歴史文化ライブラリー)

武家の本拠が構えられた空間。その場は極楽往生と現世利益の装置が備わっていた。まさに地域の安穏を希求し、そして保証する空間でもあった。そして戦争を目的とする施設の設置を本来は忌避する認識があった。武士といえども軍事的な要塞を営んではいなかった。中世武士の本拠は地域において安穏を願う空間であった。
そのような空間が十五世紀前半にいたる武家の本拠とする空間であった。
その空間に変化が訪れる。時代は戦国時代を告げる。時代と共に地域は要害を必要とした。

要するに、戦国時代までの中世武士の城(恒常的な城館)は軍事性の低いもので、要害は臨時的なものであったが、戦国時代の到来とともに恒常的な要害が必要となり、城の性質が変わったということだそうです。
そもそも中世前期の文献史料において「城」と「城郭」では意味するところが異なり、「城」という呼称には戦争と切り離されたものだ、という指摘は新鮮で興味深い。