人物を読む 日本中世史/本郷和人/講談社選書メチエ
人物を読む 日本中世史―頼朝から信長へ (講談社選書メチエ)
- 作者: 本郷和人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/05/11
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 8回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
- 第1章、源頼朝―新しい王
- 第2章、法然―平等の創出
- 第3章、九条道家―朝廷再生
- 第4章、北条重時―統治の追求
- 第5章、足利尊氏―「一つの王権」を
- 第6章、三宝院満済―ザ・黒幕(ワイアプラー)
- 第7章、細川政元―秩序なき戦乱へ
- 第8章、織田信長―圧倒的な合理性
人物論を通して中世武家政権、特に「統治」への関わりについて俯瞰しています。
源頼朝
「どうして北条政子のほかに妻をもたなかったのか」という命題をもとに、鎌倉殿としての頼朝像について語っています。つまり頼朝は、御家人たちの主としての立場・役割を自覚しており、糟糠の妻との家庭を大切にしたことも、彼らへのメッセージに他ならない、と。
ここは命題が面白いですね。女好きのイメージのある頼朝ですが、流人時代はともかくとして、鎌倉殿として君臨するようになっても、公家のお姫様はおろか有力豪族の娘を娶ることもなく*1、小豪族の娘北条政子ひとすじ。少しイメージを改める必要があるかも。
また頼朝には京都志向があったとも言われますが、娘の入内工作はしたものの、嫡男源頼家の妻も京都から迎えなかった*2ことを考えあわせると、彼が立場・役割を自覚していたとする見解は首肯できます。
足利尊氏
鎌倉時代の足利氏の実力は過大評価されているんじゃまいか、という見解は興味深い。でも取りあえずノーコメントで。
織田信長
他の戦国大名が領国経営に心血を注いでいた中で、日本全国を見据えて天下統一を目指した信長の独自性に注目しているのは『信長とは何か (講談社選書メチエ)』と同様。しかし、信長の行動の法則として「むやみな攻撃はしない」ことを挙げていますが、これは『信長とは何か (講談社選書メチエ)』の指摘する対朝倉氏・対長宗我部氏で見せた言い掛かりを付けての攻撃を忘れている。信長が許すのは、攻撃しないのは、彼に従いかつ障害にならぬ者のみだろう*3。