源通親/橋本義彦/人物叢書
- 作者: 橋本義彦
- 出版社/メーカー: 吉川弘文館
- 発売日: 1992/09
- メディア: 単行本
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- 第1、村上の源氏
- 第2、朝廷出仕
- 第3、朝政参議
- 第4、源平争乱の渦
- 第5、天下草創の秋
- 第6、院近臣の歩み
- 第7、朝幕関係の新展開
- 第8、源博陸
- 第9、続発する都下騒擾
- 第10、栄光の晩年
- むすび―通親以後
源通親に対して老獪な策士というイメージを持っていたのですが、本書から受ける印象はむしろ学者官僚といった感じ。
「策士」といったちょっとダークなイメージは、どうやら九条兼実の日記『玉葉』の影響らしいです。九条兼実といえば、源通親にとっては政敵。いやむしろ、九条兼実が一方的に嫌悪している感すらあります。まあ、九条兼実には源通親が噛んでいるわけですが、バッシングはそれ以前からのようですし。
それで、その『玉葉』は同時代における代表的な文献史料。その影響はかなり大きく、それをもろに受けたのが源通親の評価ということです。その一方で、源通親の日記は僅かな残欠が伝わるのみ。そんな一方的だった源通親の評価を、本書では公平な視点で見直そうと試みています。
そしてその試みはかなり成功していると思いますが、やはり頼りとなる史料は『玉葉』のようで、しばしば引用がみられ、読んでいて源通親ではなく九条兼実の評伝なんじゃないか、などと錯覚に陥ることも。
それから、源通親には道元の父親かどうかという問題*1について何らかの手がかりを得られるかと期待していたのですが、本書は道元の父親とするものの、それ以上の言及はなく、サラッと流されてしまいました。