日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

闘う皇族/浅見雅男/角川選書

闘う皇族 ある宮家の三代 (角川選書)

闘う皇族 ある宮家の三代 (角川選書)

  • 序章、貞明皇后の怒り
  • 第1章、皇太子妃「内定」
  • 第2章、騒動の始まり
  • 第3章、杉浦重剛と日本中学校グループ
  • 第4章、邦彦王の反撃
  • 第5章、政治と怪文書
  • 第6章、後日談
  • 第7章、朝融王事件
  • 第8章、朝彦親王久邇宮
  • 第9章、邦彦王の時代
  • 終章、貞明皇后の言葉


山内一豊のお勉強に疲れたので、息抜きするべく本書を軽く読み流す。とはいえ、かなりのボリュームで読みごたえあり。


宮中某重大事件および朝融王の婚約破棄事件の検証を通して、明治から大正にかけての皇族の立場やあり方について考察しています。
ここで俎上に上げられたのは、両事件の中心となった久邇宮家。前者は良子女王(久邇宮邦彦王長女、後の香淳皇后)が、後者は朝融王(久邇宮邦彦王長男)が当事者でした。
久邇宮家は幕末に活躍した朝彦親王に始まり、その朝彦親王は毀誉褒貶の激しさゆえに興味を掻き立てられる人物なのですが、続く邦彦王・朝融王の歴代もかなり個性的(汗)な人物だったようで、こちらも随分と興味深い人物たちです。しかも香淳皇后の父と兄なのですからなおさら。特に宮中某重大事件について大雑把な情報しか持ち合わせていなかったので、邦彦王が主体的な行動を取っていたことに驚きました。


そして本書では、皇族としての「矩」を越えて行動した彼らに対して暗に批判し、しかもそれが戦後に臣籍降下した旧皇族全体に及んでいる*1。しかし、本書で紹介されてきたのは久邇宮家という旧皇族でも極一部の例であり、他の皇族のことも多少触れているとはいえ、やや話を広げすぎな感があります。それから本書を読んだ限りでは、どちらかというと久邇宮家が特異な例外であったという風にも感じます。
次は、他の皇族も含めて考察した戦前皇族論・旧皇族論を読みたいですね。

*1:終章では、臣籍降下決定の際の貞明皇后の冷ややかな発言を引用紹介。さらにあとがきで現代の皇位継承問題における旧皇族養子案を批判。さらに皇族を増やすことへの疑義を呈し、皇族の存在意義自体を問うているようにも思えるのですが、穿ちすぎでしょうか。