日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

源義経/近藤好和/ミネルヴァ書房

源義経―後代の佳名を貽す者か

源義経―後代の佳名を貽す者か

  • 序章、義経の略歴と史料
  • 第1章、義経の登場
  • 第2章、木曽義仲追討と治承・寿永期の武具と戦闘
  • 第3章、一ノ谷合戦
  • (つづく)


ミネルヴァ日本評伝選の一冊。まだ途中ですが、人物評伝としてはちょいと物足りないかな。この一年、数々の義経関連書籍を読み込んで来たことを差し引いてもね。


ただし、第3章は要注目。
これまで不可能と考えられてきた断崖絶壁*1からの逆落とし、まー、それが現代人の普通の感覚で、私だってそう思うんですけど、その逆落としが可能であろうという仰天サプライズ
その証拠として19世紀末〜20世紀初頭におけるスペインでの断崖絶壁を降りる騎兵訓練の写真を載せているんですが、この写真、目を疑うような状況になってます。う〜ん、ホントですかこれ?!
そうであれば、訓練次第でこのようなことが出来るようにもなる、そして起伏に富んだ地形の日本で日々騎馬の訓練をしていた武士が断崖絶壁を降りられる可能性はある、という話も頷けなくはないですね。
しかし一方で、『玉葉』『吾妻鏡』『平家物語』などの文献史料に基づく考察では、「逆落とし」が無かった可能性が高い、とトーンダウン。やっぱり文献史料研究ではそこに行き着くんですね。


物理的な可能不可能と、史実としてどうかというのはまた別の問題ですものね。
とはいえ、やはり何らかのサプライズがあったのではないか、それに義経が関与していたかどうかは別としても。そしてそれが『平家物語』によって話が膨らまされ、形作られたのではないかと思うのです。ゼロから生み出された虚構という可能性は否定できませんが、「何か」あったのではないかと考える方が自然な気がします。まー、その「何か」が問題なんですけど。

*1:大河ドラマ義経』でのような傾斜の斜面ではなく、ホントに90度あるような崖。