日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

刀狩り/藤木久志/岩波新書

刀狩り―武器を封印した民衆 (岩波新書 新赤版 (965))

刀狩り―武器を封印した民衆 (岩波新書 新赤版 (965))

本書の主旨は、「豊臣秀吉の刀狩りによって民衆は武装解除され、近世の民衆は丸腰の無力な存在であった」とする通説の否定にあるのですが、そもそもそのような理解を前提として持ち合わせていなかったため、驚きとかそういったものが低め。


とはいえ、興味深い事例や見解は随所に見られます。
刀狩令の条文では武具全般を対象としているにも関わらず、秀吉や奉行たちが関心を寄せるのはあくまで刀・脇差にあったこと。「刀狩り」の実態は文字通りだったんですね。
帯刀の可否による身分統制という政策は、その後も徳川幕府、そして明治政府廃刀令にまで引き継がれていくこと。「廃刀」令といっても実態は「帯刀禁止」令だったそうです。つまり所持しているだけならお咎めなし。さらに腰に指さず、包み隠して持ち歩くのもアリってんだから驚き。
その他いろいろ盛りだくさん。盛りだくさん過ぎて私にはちょっとしんどい面も・・・。(^^;


あとは・・・刀狩り自体は民衆の武装解除に関して充分とは言えませんでしたが、併せて出された喧嘩停止令による「武器の保持は認めても使用は認めない」と言う姿勢をセットで打ち出したことが、自力救済が基本の中世社会から法による統治への転換に大きく貢献していることを認識。中世はここで終わったと言っても過言ではないかもしれない。