日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

源義経の挙兵と土佐房襲撃事件/菱沼一憲/日本歴史(684号)

最新号の論文。


土佐坊昌俊による源義経襲撃事件についての考察で、ヒジョーに興味深い内容です。
掻い摘んで言うと、土佐坊昌俊源頼朝の命令による刺客で、襲撃を受けた義経は挙兵を決意し、後白河院院宣を乞うた、というのが『吾妻鏡』や『平家物語』に基づいた通説理解になっているが、これに対して本論文では九条兼実の日記『玉葉』を検証することによって、この通説理解を否定し、まず義経の挙兵が先にあること、そして院宣の後に土佐坊昌俊の襲撃を受けたと論じている。
つまり、頼朝は刺客を派遣しておらず、義経の挙兵は頼朝にとって意図したものではなかった可能性を指摘。土佐坊昌俊らは京における反義経・親頼朝方として独断で動いたものであろう、としている。


まだまだ考証の余地があるとは思いますが、とても刺激的な見解。私としては、この見解が「何故、頼朝は義経を京へ追い返したのか?」という以前*1からの疑問への糸口になることを期待したい。


ちなみに菱沼氏は『源義経の合戦と戦略 ―その伝説と実像― (角川選書)』の著者なので、こちらの本も読むのが楽しみになった。