日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

夢から探る中世/酒井紀美/角川選書

夢から探る中世 (角川選書)

夢から探る中世 (角川選書)

  • 第1章、交差する三つの道
  • 第2章、戦乱と土一揆のひろがり
  • 第3章、未来記と夢語り


本書の中心人物は、室町時代中期ともに大乗院門跡であった経覚と尋尊。
両人が遺した日記には、当人および周囲の人々が見た夢についての記述があり、それを題材にして中世社会の考察をしようというのが本書のテーマ。なんですが、第1章にはほとんど夢の話は出てこず、経覚・尋尊の経歴・動向、さらには彼らを中心とする奈良および大和国の政治情勢を縷縷説明されています。まあそれはそれで、大和国人衆の動きがみえてきて面白いです。


第2章中盤からポツポツと、第3章になってようやく夢の話が中心になります。夢について当時の人々は、現在のように深層心理からくる自己の内面の反映とは考えず、外部から特に神仏からのメッセージと捉えられているとのこと。それゆえ、夢見に一喜一憂したり、夢見によって実際の行動を決定したりするのだが、現代人の眼には滑稽でもあり微笑ましくも映る。