日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

遠いうた/徳川元子/文春文庫

遠いうた―徳川伯爵夫人の七十五年 (文春文庫)

遠いうた―徳川伯爵夫人の七十五年 (文春文庫)

  • 一、ふるさと 加賀町
  • 二、母の死の頃
  • 三、駿河台の家
  • 四、祖父母や父のことなど
  • 五、関東大震災
  • 六、結婚と外遊
  • 七、第二次世界大戦
  • 八、戦後、そして今


旧大垣藩主の戸田伯爵家に生まれ、旧御三卿の田安徳川伯爵家に嫁がれた女性による自叙伝。著者は既に故人で、本書も昭和58年の刊行本が先月文庫化されたもの。
思い出話は聞くのも読むのも楽しいし、それが歴史上の事象や人物に絡んでくるとなるとなおさら。


婚家田安徳川家の話が少ないのは残念だが、実家戸田家の話、特に実母亡き後引き取られた祖父母*1との暮らし、また祖母から聞いた曾祖父岩倉具視の話などが興味深い。
また祖母極子はその美貌*2ゆえに、好色の伊藤博文から仮装舞踏会のとき迫られて、何とか逃げだすも醜聞として広まってしまった事件(ファンシーボール事件)があるが、その件も祖母から聞いた話として載っていて、千円札(当時)の伊藤博文を見る度に特別な感懐が湧いてくると記している。いったいどのような顔して自らの醜聞を孫娘に語ったのだろうか、すごく気になる。

*1:祖父は最後の大垣藩主戸田氏共、祖母は岩倉具視の次女で「鹿鳴館の華」と謳われた極子。

*2:幕末・明治美人帖―古写真が語る麗しの300人 (別冊歴史読本 (68))』に当時の極子の写真があるが確かに美しい。