日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

源義経/上横手雅敬/平凡社ライブラリー

全般的に無難な記述の入門書といった感じ。サクサク読めるので、私には珍しく1日で読了。
それでも興味を引く視点がふたつ。あとがきから引用させてもらうと、

本文の方で私が強調したのは、鎌倉幕府が編纂した『吾妻鏡』が『平家物語』などに比べて「判官びいき」の度合いが強いことである。『吾妻鏡』は反逆者であるはずの義経に同情的で、義経を迫害した頼朝に厳しい。『吾妻鏡』には編纂当時権力を掌握していた北条氏の立場が色濃く反映しているが、実は北条氏は頼朝に対して批判的だったのではないだろうか。その上、義経だけでなく、曾我兄弟、畠山重忠らが北条氏と結び付けられており、北条氏は人気者の多くを自己の陣営に動員しているように見える。

吾妻鏡における頼朝時代の記述は、それ以降に比べて冗長で物語的なとこがあるので、そのような脚色は充分考えられましょう。

頼朝はこうして法皇義経追討宣旨を出さざるを得ないように挑発し、法皇が遂に義経追討宣旨を出すと、それを口実に種々の政治的難題を法皇に突きつけたのである。これまで法皇は頼朝に対抗させるために義経を利用したといわれてきたが、事実は頼朝は法皇との関係において、義経を利用したのだと、最近私は考えている。

後白河法皇だけでなく、奥州藤原氏に対してもでしょうな。そうでなきゃわざわざ京へ追い返す意味がない。あの時点で追い返す以外の方策がなかったとも考えにくいし。ちなみに以前も同じような話題が。


義経の悲劇/奥富敬之/角川選書 - 日本史日誌